成年後見制度利用促進とは何ですか?

2019年4月23日成年後見

成年後見制度

現在の成年後見制度の現状を見てみると、成年後見制度の利用が必要にもかかわらず、成年後見制度を利用していない方や利用したくても利用できない方、また制度自体ががあまり知られていないため利用する機会を逃している方など成年後見制度が全国隈なく浸透している状態には残念ながら至っていません。

これから日本における人口の高齢化率が上昇し、ますます成年後見制度の利用が増えていくものと思われます。

このまま成年後見制度が低調な利用になってしまうと高齢者や障がい者の方の様々な権利が侵害されたり、自由な生活ができなくなる問題が生じてしまうので、国主導のもと後見制度の利用を促進するための計画を始動させています。

成年後見制度の利用の促進に関する法律」が平成28年4月15日に公布され、同年5月13日に施行されました。

この法律は、その基本理念を定め、国の責務等を明らかにし、また、基本方針その他の基本となる事項を定めるとともに、成年後見制度利用促進会議や成年後見制度利用促進委員会を設置すること等により、成年後見制度の利用の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進していくものです。

平成29年3月24日に成年後見制度利用促進基本計画が閣議決定されました。

平成30年4月より厚生労働省は成年後見制度利用促進室を設置し、この基本計画(五か年計画)に基づき、専門家の意見を取り入れながらこれらの施策を総合的かつ計画的に推進していくことになっています。

基本計画は平成33年度(令和3年度)まで続き、現在は、有識者の意見を聞いたりして今後の制度を形を作っていくための整理、検討、整備を進めている段階です。(2019年4月現在)

これから、成年後見制度利用促進のための基本計画の主な概要について見ていきたいと思います。

3つの基本理念

基本計画を推進していくにあたって、成年後見制度の基本理念として3つの理念をあげています。

1. ノーマライゼーション
2. 自己決定権の尊重
3. 身上の保護の重視

1つ目の「ノーマライゼーション」とは、成年後見制度を必要とされる個人の方が、個人としての尊厳を重んじ、その尊厳にふさわしい生活を保障できるようにすることです。

2つ目の「自己決定権の尊重」とは、すべて手を差し伸べるという考え方ではなく、本人が意思決定できるものであれば、その意思を尊重し、最小限の支援で本人の意思決定ができるならば、その方法で本人の意思決定を実現するというように意思決定支援の重視と自発的意思の尊重をするということです。

3つ目の「身上の保護の重視」とは、財産管理のみならず、「身上保護」も重視するということです。

基本計画により計画的に講ずべき施策

計画的に講じていく施策は、次のようなものがあります。

1. 利用者がメリットを実感できる制度・運用へ改善を進める

2. 全国どの地域においても必要な人が成年後見制度を利用できるよう、各地域において、権利擁護支援の地域連携ネットワークの構築する

3. 後見人等による横領等の不正防止を徹底するとともに、利用しやすさとの調和を図り、安心して成年後見制度を利用できる環境を整備する

4. 成年被後見人等の権利制限に係る措置(欠格条項)を見直す
(令和元年5月には、ほとんどの法令から成年被後見人等の権利に係る制限が撤廃します)

 

利用者がメリットを実感できる制度・運用の改善をする

現在の後見制度は、利用者からみると実際にメリットが実感できない場合や利用者のニーズに応えられていないなど問題点もあります。

例えば、実際に成年後見制度を利用すると、
成年後見人制度による支援と本人のニーズとの間に大きな開きがある場合がある
手続きが煩雑で後見人の負担が大きい
財産管理に重点が置かれすぎていて身上監護が手薄である
思わぬ費用が発生する
親族が後見人候補者として申立しても親族後見人が就任できなかった
専門職後見人が横領事件を起こしてしまっている
本人の利益保護を考えると専門職後見人が後見人として適任とは限らない

といったこともよく耳にするのも事実です。

そうした問題点を行政庁、裁判所、専門家団体や有識者が集まって議論や情報共有し、成年後見制度の利用者がメリットを実感でき、制度の運用の改善するための話し合いが行われています。

具体的には成年後見制度開始時・開始後における身上保護の充実をはかり、本人の意思・身上に配慮した後見事務を適切に行うことのできる後見人等を家庭裁判所が選任できるようにします。

例えば、本人の生活状況等に関する情報が,医師・裁判所に伝わるよう関係機関による支援方法として、本人情報シートを新たに取り入れ、医師や裁判所、介護福祉士の情報共有が容易にできるようにします。

後見・保佐・補助の判別が適切になされるよう、医師が本人の置かれた家庭的・社会的状況も考慮しつつ適切な医学的判断を行えるように分かりやすく記載できるようにした診断書に作り替えています。

2019年4月より、後見開始の申し立ての際には、新様式の診断書と本人情報シートで申し立てをするようになりました。

また、高齢者と障がい者の特性に応じた意思決定支援の在り方についての指針(ガイドライン)の策定等の検討、成果の共有等も行います。

最高裁と専門職団体との間で共有した後見人等の選任の基本的な考え方

最高裁判所と日本弁護士連合会,日本司法書士会連合会,公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート,公益社団法人日本社会福祉士会からなる専門職団体との間で後見人候補者の選任について議論がおこなわれました。

最高裁と専門職団体との間で後見人等の選任について下記に記した基本的な考え方が共有され、平成31年1月に各家庭裁判所に情報提供されました。

今後裁判所の選任方法が一部見直されて、後見人となるにふさわしい方が後見人に選任されやすくなると思われます。

1.  本人の利益保護の観点からは,後見人となるにふさわしい親族等の身近な支援者がいる場合は,これらの身近な支援者を後見人に選任することが望ましい

2.  中核機関による後見人支援機能が不十分な場合は,専門職後見監督人による親族等後見人の支援を検討する

3.  後見人選任後も,後見人の選任形態等を定期的に見直し,状況の変化に応じて柔軟に後見人の交代・追加選任等を行う

成年後見制度利用促進の体制整備

順次、権利擁護支援の地域連携ネットワーク及び中核機関の整備がされていきます。

地域連携ネットワーク、チーム、協議会、中核機関との関係

基本計画によれば、地域連携ネットワークは、本人を後見人とともに支える「チーム」と、地域における「協議会」等という2つの基本的仕組みを有するものとされています。

こうした地域連携ネットワークを整備し適切に協議会等を運営していくためには、「中核機関」が必要であるとされています。
これら「チーム」「中核機関」「協議会」の関係はどのようなものなのでしょうか。

チームとは?

チーム」とは、後見人だけが本人を支えるのではなく、本人に身近な親族、福祉・医療・地域等の関係者と後見人が「チーム」となって日常的に本人を見守り、本人の意思や状況を継続的に把握し必要な対応を行う仕組みです。本人の生活状況等に関する情報が伝わり,必要な支援が受けられるようになります。

協議会とは?

協議会」は、成年後見等開始の前後を問わず、「チーム」に対し法律・福祉の専門職団体や関係機関が必要な支援を行えるよう、各地域において専門職団体や関係機関が連携体制を強化し、各専門職団体や各関係機関が自発的に協力する体制づくりを進める合議体です。

「地域連携ネットワーク」の機能・役割が適切に発揮・発展できるよう専門職団体など地域の関係者が連携し、地域課題の検討・調整・解決に向け継続的に協議する場になります。

中核機関がその事務局を務めます。中核機関や地域連携ネットワークの活動をサポートするとともに、それらの活動のチェック機能も担います。主に自治体圏域~広域圏域で設立運営されることが想定されます。

中核機関とは?

中核機関は、地域連携ネットワークを整備し適切に協議会等を運営していくための必須の機関と位置られており、主に3つの機能があります。専門職団体は、地域連携ネットワーク及び中核機関の設置・運営に積極的に協力していくことになります。

1. 地域の権利擁護支援・成年後見制度利用促進機能の強化に向けて、全体構想の設計とその実現に向けた進捗管理・コーディネート等を行う「司令塔機能

2. 地域における「協議会」を運営する「事務局機能

3. 地域において「3つの検討・専門的判断」を担保する「進行管理機能」

地域連携ネットワークの役割・機能とは?

地域連携ネットワークは、地域包括支援センター、社会福祉協議会、民生委員・自治会等地域関連団体、家庭裁判所、金融機関、医療・福祉関連団体、民間団体・NPO等、弁護士会・司法書士会・社会福祉士会等が集まって作られたネットワークで、下記のような役割・機能を担います。

1. 広報機能(権利擁護の必要な人の発見、周知・啓発等)
2. 相談機能(相談対応、後見ニーズの精査、見守り体制の調整等)
3. 利用促進(マッチング)機能
4. 後見人支援機能(チームによる支援、本人の意思を尊重した柔軟な対応等)
5. 不正防止効果と利用しやすさとの調和

まとめ

基本理念として掲げた3つの理念のもとに成年後見制度が、利用者にメリットを実感できる制度として利用が拡大し運用されるには、制度が現在よりも利用しやすさが改善されていかなければならないと思います。
地域連携ネットワークと協議会の運営をつかさどる「中核機関」の果たさねばならない役割も大きいものとなっていくでしょう。

中核機関は、基本的には市町村によって直接あるいは委託によって中立、公正な立場で運営されていくと思われますが、多くの関係機関との調整・コーディネート・進行管理していかねばならず、成年後見制度がよりよい制度になるかどうかは「中核機関」の働きにかかっているといっても過言ではないようです。

全国どの地域においてもまとめ役である中核機関が機能不全とならないようにしなれけばならいと思います。

また、中核機関だけでなく多くの関係機関が相互協力のもとにお互いに活発な情報共有をして本人のニーズをうまく汲み取り連携してかなければならないと思います。

最後に、成年後見制度利用促進に関連して、私が所属している埼玉県行政書士会と一般社団法人コスモス成年後見サポートセンター(以下、コスモス埼玉)の活動を紹介いたします。

埼玉県は埼玉県成年後見制度利用促進協議会を平成30年5月31日に設置しており、コスモス埼玉は、その協議会に専門職団体として埼玉県行政書士会とともに選任されています。

その後開催されたさいたま家庭裁判所の管轄する埼玉県下7地域の成年後見制度利用促進地区協議会にも専門職団体として出席いたしました。

さいたま家庭裁判所が主催する家事関係機関との連絡協議会にも新たに選任され出席いたしました。