2019年7月1日施行の民法改正の内容(抜粋)

2019年7月2日相続

相続法改正
相続分野で民法が約40年ぶりに大改正されました。相続分野の改正は、施行日を3回に分けて施行されますが、前回の第1弾(2019年1月13日に「遺言方式」の改正が施行)に続いて第2弾目です。今回の2019年7月1日施行の民法改正の中でも、重要なものを4つ取り上げて要点をまとめてみました。

(配偶者居住権関係については、2020年4月1日に施行されます。なお、法務局に自筆証書遺言を保管できる制度も創設されますが、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」の施行日は2020年7月10日です。)

長期間婚姻している夫婦間で行った居住用不動産の贈与等を保護するための改正

婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産を遺言で相続させたり、生前贈与していた場合、原則、相続時に相続財産にそれらの財産を持ち戻さなくなりました。

つまり、生前受けた目的財産について遺産の先渡しを受けたものとして扱う必要がなくなります。目的財産を配偶者に与えたいという被相続人の配偶者に対する想いを汲み取った改正です。

改正前では、目的財産を相続財産に持ち戻すと息子たちには現金が多く相続されるが、配偶者がもらう財産は不動産が多く現金の額が少なくなってしまい将来の生活に支障がでてくるなどの問題がありました。

今回の改正によりこれらの財産を持ち戻しせず遺産分割ができるので、配偶者はより多くの財産を相続することができます。

相続された預貯金の払い戻しについての改正

預貯金が遺産分割の対象になる場合、各相続人は単独で遺産分割が終わる前でも家庭裁判所の判断を経ずに一定限度の預貯金の払戻しを受けることができるようになります。

一つの金融機関から払戻しが受けられる上限は150万円です

相続が発生すると、入院費の清算や葬儀費用などまとまった資金が必要であったり、預金が凍結されると生活費など不足する恐れがあります。

緊急のお金が必要でも遺産分割協議が整わないと預貯金の解約や引き出しができないのでは、入院費や葬儀費用が支払えず困ってしまうことが出てきてしまいます。裁判所を介することなくすぐに通常最低限必要と思われる金額の引き出しができるようにするための改正です。

実際に引き出せる額は、次のような式で計算した額まで引き出しできます。

引き出し限度額(ただし、1金融機関ごと上限150万円まで) = 相続開始時の預貯金の額(口座基準)×3分の1×請求する相続人の法定相続割合

遺留分減殺請求の金銭債権化についての改正

遺留分を侵害された相続人が主張する権利(遺留分減殺請求)を金銭債権化しました。

遺留分を侵害された相続人は、その侵害額に相当する金銭の請求を、遺言で財産をもらう人や生前贈与を受けた人に対して遺留分を請求することができますが、仮に遺産が不動産であったとしても、不動産かかる権利を請求できず、金銭請求のみとなりました。

事業承継の支障をなくしたりや共有を回避して処分しやすいようにしたり、「目的財産を財産を受けた方に与えたい」という被相続人の意思を尊重するために改正されたのですが、もし、金銭請求を受けた人がお金を直ちに用意できない場合は、裁判所に対して支払期限の猶予を求めることができるようになりました。

このため、今後の対策としては、上記の財産を受けていた方は、現金で遺留分侵害額を支払えるよう用意しておく、または、被相続人が財産を受けた方を受取人とする生命保険を利用するなど何らかの手立てを施しておくことも必要になってくるでしょう。

そうしておかなければ、裁判所による支払期限の猶予があるとはいえ、財産をもらっても財産を受けた方が困ってしまうことになりかねませんので注意しておきたいところです。

相続人以外の者の貢献(特別の寄与)を考慮するための改正

相続人以外の親族が無償で亡くなった方の療養看護等を行なった場合、その親族は相続人に対して金銭(特別寄与料)の請求ができるようになりました。

典型的な例では、相続人でない「長男の嫁」が、夫の父親の療養看護等を全て行っていて、相続人の兄弟姉妹は全く父親の面倒を見ていないけれども、相続人なので、父親の相続財産は相続人間で分配され、長男の嫁は何ももらうことができない問題がありました。

たとえば、長男夫婦に子供がおらず、長男の夫が既に亡くなっている場合など、長男の父親が遺言を残しておくなどして何らかの生前対策しておかなければ、改正前は、長男の嫁にとって理不尽な分配になってしまっていました。

この民法の改正により、無償で療養看護を行っていた親族に一定の保護が図られるようにはなりましたが、できれば被相続人が元気なうちに遺言等で意思表示されておいた方が、特別寄与料を請求できる方にとっても望ましいですし、被相続人(遺言者等)の意思が尊重されたかたちで承継もでき、その後の相続のもめごとも予防できると思います。

相続

Posted by 栗原誠