後見制度支援信託と後見制度支援預金の違いとは?

2020年11月27日

成年後見支援預金

家庭裁判所かていさいばんしょは、後見開始こうけんかいしまたは未成年後見人みせいねんこうけんにんの選任せんにんの申立てがあった場合や、既に後見人こうけんにんが選任されている場合で、「後見制度支援信託こうけんせいどしえんしんたく」や「後見制度支援預金こうけんせいどしえんよきん」の利用に適していると判断したときに、親族後見人しんぞくこうけんにんやその候補者こうほしゃに対してこれらの制度を紹介した上で、これらの制度の利用を検討けんとうするように勧すすめることがあります。

全国の家庭裁判所における「後見制度支援信託こうけんせいどしえんしんたく」は利用開始(2012年より運用開始)から時間が経過していますので、全国的に浸透しんとうしていますが、「後見制度支援預金こうけんせいどしえんよきん」も最近では取り扱える家庭裁判所が増えてきています。

「後見制度支援預金こうけんせいどしえんよきん」は、東京家庭裁判所とうきょうかていさいばんしょ(本庁ほんちょう)では平成へいせい30年から取り扱いがスタートしました。さいたま家庭裁判所川越支部かていさいばんしょかわごえしぶでも取り扱いできるようになっています。

「後見制度支援預金こうけんせいどしえんよきん」はわずか1年程で全国の信用金庫しんようきんこや信用組合しんようくみあい、地方銀行ちほうぎんこうに広がり、後見制度支援預金こうけんせいどしえんよきんを取り扱う金融機関も増え続けています。

信用金庫等しんようきんことうや農漁協同組合等のうぎょうきょうどうくみあいとうは、『成年後見制度せいねんこうけんせいど』に対する関心が非常に高いことがうかがえますが、銀行界ぎんこうかいでは、静岡中央銀行しずおかちゅうおうぎんこうや十六銀行じゅうろくぎんこうなど導入済みの銀行はまだ少数しょうすうに限かぎられ、導入予定の銀行も割合が低い傾向になっています。

しかし、厚生労働省こうせいろうどうしょうの主導のもと成年後見制度の利用を促進そくしんする基本計画きほんけいかく(五か年計画ごかねんけいかく)が実行され、金融庁きんゆゆちょうが目標値もくひょうちを設定(KPIを設定)される方向で調整しており、後見制度支援預金こうけんせいどしえんよきんを取り扱うことのできる金融機関数は今後増加させてゆく方向になっていくようです。

埼玉県内さいたまけんないの信用金庫では、埼玉懸信用金庫さいたまけんしんようきんこ、飯能信用金庫はんのうしんようきんこ、川口信用金庫かわぐちしんようきんこ、青木信用金庫あおきしんようきんこが取り扱っています。(2019年4月現在げんざい)

以下では、近年取り扱いが開始された「後見制度支援預金こうけんせいどしえんよきん」と「後見制度支援信託こうけんせいどしえんしんたく」の違ちがいやそれぞれのメリット・デメリット等、後見人になっている方やご家族の方が知っておくべき情報をまとめてみました。

後見制度支援信託こうけんせいどしえんしんたくと後見制度支援預金こうけんせいどしえんよきんの違ちがい

後見制度支援預金こうけんせいどしえんよきんは、後見制度支援信託こうけんせいどしえんしんたくと同じ趣旨おな しゅしの制度ですが、被後見人の財産について、信託銀行等しんたくぎんこうとうに信託するのではなく、信用金庫しんようきんこや信用組合等しんようくみあいとうに預金して管理するという違いがあります。後見制度支援預金こうけんせいどしえんよきんが利用できる場合、後見制度支援信託こうけんせいどしえんしんたくと比べて、費用や後見制度支援預金口座開設後こうけんせいどしえんよきんこうざかいせつごの手続きの利便性りべんせいに優れている特徴があります。

両制度りょうせいどの共通点きょうつうてん

後見制度支援信託こうけんせいどしえんしんたくも後見制度支援預金せいねんこうけんしえんよきんも、後見制度による支援を受ける人(被後見人)の財産のうち、日常的な支払いをするのに必要十分な金銭きんせんを預貯金等よちょきんとうとして後見人が管理し、通常使用つうじょうしようしない金銭を金融機関に信託しんたくする(「支援預金しえんよきん」の場合は預金よきんする)仕組しくみみのことです。

成年後見せいねんこいけんと未成年後見みせいねんこうけんにおいて利用することができます。保佐ほさ、補助ほじょおよび任意後見にんいこうけんでは利用できません。

親族後見人しんぞくこうけんにんは、長期にわたって後見制度こうけんせいどによる支援を受けている人の財産を管理することになります。後見人は必ずしも財産管理ざいさんかんりの専門家せんもんかではないので大きな負担ふたんとなります。

また、多額の金銭管理きんせんかんりがともなう場合には、管理方法かんりほうほうなどをめぐって親族間しんぞくかんのトラブルに発展はってんするおそれもあります。

この制度を利用すると必要な金額分だけ手元に置くことができ、普段使わない分は金融機関で管理されるので、後見人の負担ふたんを軽減けいげんできます。

払い出し等には家庭裁判所の指示書しじしょが必要で裁判所が監視役かんしやくとなっているため親族間しんぞくかんのさまざまなトラブルも未然みぜんに防ふせぐことができます。

両制度りょうせいどともに、裁判所を介して被後見人の財産の適切な管理・利用のための方法です。信託財産しんたくざいさん(「支援預金しえんよきん」の場合は預金)を払い戻したり、信託契約しんたくけいやくを解約したり(「支援預金しえんよきん」の場合は預金口座よきんこうざを解約かいやく)するには、家庭裁判所かていさいばんしょが発行はっこうする指示書しじしょを必要ひつようとします。

裁判所さいばんしょの指示書しじしょが必要ひつような場合ばあいとは?

具体的ぐたいてきには、以下のような場合に家庭裁判所による指示書しじしょの交付こうふを求める必要があります。

1. 被後見人ひこうけんにんに多額たがくの出費しゅっぴを要する事情じじょうが生じ、親族後見人しんぞくこうけんにんが手元で管理している金銭だけでは足りない場合

2. 被後見人の施設入所先変更等しせつにゅうしょさきへんこうとうにより日常的にちじょうてきなな収支状況しゅうしじょうきょうに変動へんどうがあり、定期交付金額ていきこうふきんがくを変更したい場合

3. 被後見人に臨時的収入りんじてきしゅうにゅうがあったり、黒字分くろじぶんが貯たまったりして、親族後見人の手元で管理する金銭が多額になった場合

4. 被後見人を自宅じたくで介護かいごすることになり信託財産しんたくざいさんの全てをリフォーム代金に充てる必要がある等の理由により、信託契約を解約かいやくしたい(「支援預金しえんよきん」の場合は預金口座よきんこうざを解約かいやくしたい)場合

後見制度支援信託こうけんせいどしえんしんたくとは?

後見制度支援信託こうけんせいどしえんしんたくを利用する場合、どの銀行に財産を信託するか、また、いくら信託するかといったことについては、原則として、専門職後見人せんもんしょくこうけんにんが被後見人に代わって決めた上で、家庭裁判所の指示を受けて、銀行等の間で信託契約しんたくけいやくを締結ていけつします(制度せいどに精通せいつうしている専門職後見人であれば親族の意見も聞きつつ信託契約を結ぶ銀行を決めると思われます)。

後見制度支援信託こうけんせいどしえんしんたくを利用して信託銀行等しんたくぎんこうとうに信託することができる財産は、金銭きんせんに限られます。不動産ふどうさん、動産どうさん、金銭債権きんせんさいけん、有価証券ゆうかしょうけんといった金銭以外の財産は、後見制度支援信託こうけんせいどしえんしんたくで信託することはできません。

家庭裁判所が、後見制度支援信託こうけんせいどしえんしんたくの利用に適しているかどうかを判断する基準は、被後見人がもっている預貯金よちょきんや上場株式等じょうじょうかぶしきとうの流動資産りゅうどうしさんの総額そうがくが主な判断基準はんだんきじゅんにされています。

基準額きじゅんがくは各家庭裁判所によって異なりますが、さいたま家庭裁判所では、被後見人に1200万円以上の流動資産りゅうどうしさんがある場合に、後見制度支援信託こうけんせいどしえんしんたくの検討対象けんとうたいしょうとしています。

なお、必ずしも基準額未満きじゅんがくみまんであれば対象とならないというわけではありません。

金融機関きんゆうきかんを選えらぶにあたって重要じゅうようなポイント

金融機関きんゆうきかんごとに金額は異なりますが、信託する最低金額さいていきんがくを設定していたり、口座開設手数料こうざいかせつてすうりょうや口座管理手数料こうざかんりてすうりょうが必要な金融機関が多くあります。

金融機関によっては1000万円以下の場合は、口座開設できないところや、基準金額以下きじゅんがくいかの場合に、口座管理手数料こうざかんりてすうりょうが発生するところもあります。

銀行と信託契約しんたくけいやくをするのは専門職後見人せんもんしょくこうけんにんですが、親族後見人しんぞくこうけんにんも信託銀行等しんたくぎんこうとうを選ぶ際に事前に下調べしておき、後見制度支援信託契約こうけんせいどしえんしんたくけいやくをする専門職後見人せんもんしょくこうけんにんとよく話し合って選ぶとよいと思います。

重要じゅうようなポイントは、
① 最低受託金額さいていじゅたくきんがく
② 費用ひよう
③ 利便性りべんせい(店頭てんとうでなくても手続きできるか等)
の3点
を考慮こんりょにいれて選ぶとよいと思います。

後見制度支援信託こうけんせいどしえんしんたくを利用りようしないとどうなるか?

親族後見人しんぞくこうけんにんが後見制度支援信託こうけんせいどしえんしんたくの利用を希望しない場合は、裁判所が無理に利用に向けた手続きを進めることはありません。

しかし、被後見人の財産を適切に管理するために、裁判官の判断により、後見監督人こうけんかんとくにん(後見人の事務を監督かんとくする人)が選任されることがあります。

親族後見人が後見制度支援信託の利用を拒否する場合、多くは後見監督人が選任されることになります。

後見監督人が選任された場合は、後見人は、親族後見人は、後見監督人に対して定期報告ていきほうこくをしなければならなくなります。

後見監督人に対して報酬ほうしゅうが発生します。概ね月額1~3万円くらいの報酬が発生するようになります。

後見制度支援信託こうけんせいどしえんしんたくのメリット

両制度りょうせいどの共通点きょうつうてんでお伝えしたメリット以外としては、専門職後見人せんもんしょくこうけんにんが選任された場合、親族後見人自身で後見制度支援預金こうけんせいどしえんよきんの開始手続きをする必要はなく、専門職後見人せんもんしょくこうけんにんが口座開設手続こうざかいせつてつづきをしてくれます。

また、定期的に払い出す額が設定された場合、被後見人の毎月の収入や支出を専門家が調査した後に専門職後見人が裁判所に意見書いけんしょを出して決定されるので、適正な額や方法が設定されます。

後見制度支援信託こうけんせいどしえんしんたくのデメリット

専門職後見人が口座開設手続きをして辞任した場合、専門職後見人に報酬が発生します。
概おおむね10~30万円くらいのようです。(報酬は裁判所が決定し、被後見人の財産の中から支払われます。)

専門職後見人せんもんしょくこうけんにんが辞任し、親族後見人しんぞくこうけんにんのみの場合、たとえば急な出費や後見人が手元で管理している金銭だけでは足りない場合等に、信託財産から払戻しを受けるためには、親族後見人自ら、裁判所に理由書等の提出や金融機関に対して指示書による払い戻し手続きが必要になります。

金融機関が遠方であったり窓口のみの取扱しかできない金融機関の場合は、手間や負担が増えます。

金融機関に対する報酬ほうしゅう(契約締結手数料けいやくていけつてすえりょう・解約手数料等かいやくてすうりょうとう)・口座管理料こうざかんりてすうりょうも発生します。金融機関により、発生要件はっせいようけん、金額は千差万別せんさばんべつです。金融機関ごとに調べる必要があります。

被後見人に馴染なじみのない金融機関に多額の金額を管理してもらうため、被後見人に説明する際にトラブルになる可能性があります。

後見制度支援預金こうけんせいどしえんよきんとは?

「後見制度支援預金こうけんせいどしえんよきん」は、「後見制度支援信託こうけんせいどしえんしんたく」同様、成年後見と未成年後見において利用することができます。保佐ほさ、補助ほじょおよび任意後見にんいこうけんでは利用できません。後見制度支援信託こうけんせいどしえんしんたくは、被後見人の財産の適切な管理・利用のための方法の一つです。

「後見制度支援預金こうけんせいどしえんよきん」を利用すると、信託財産しんたくざいさんを払い戻したり信託契約しんたくけいやくを解約かいやくするには、家庭裁判所が発行する指示書しじしょを必要ひつようとするのも「後見制度支援信託こうけんせいどしえんしんたく」と同様です。

後見制度支援預金こうけんせいどしえんよきんのメリット

両制度の共通点でお伝えしたメリット以外としては、後見制度支援預金こうけんせいどしえんよきんでは、専門職後見人せんもんしょくこうけんにんの選任を不要としており、専門職後見人等せんもんしょくこうけんにんとうが選任されなければ報酬ほうしゅうが不要ふようです。

後見制度支援信託こうけんせいどしえんしんたくの取扱金融機関とりあつかいきんゆうきかんが都市部としぶに集中している信託銀行等に比べ、後見制度支援預金こうけんせいどしえんよきんを取り扱う金融機関は地域密着型ちいきみっちゃくがたの信用金庫等ですので利便性に優れています。

預け入れ金額の下限が無く普通預金金利型ふつうよきんきんりがたの場合、普通預金扱いで利息りそくが付きます。

信用金庫や信用組合等に対して、開設時にかかる口座開設手数料や口座管理費が後見制度支援信託よりも低額になる場合が多いです。(金融機関により異なります。)

後見制度支援預金こうけんせいどしえんよきんのデメリット

専門職後見人せんもんしょくこうけんにんが選任されないので親族後見人自身しんぞくこうけんにんじしんで後見制度支援預金こうけんせいどしえんよきんの口座開設手続こうざかいせつてつづきをしなければならないのがデメリットといえるでしょう。

後見制度支援信託同様こうけんせいどしえんしんたくどうように、被後見人ひこうけんにんに馴染なじみのない金融機関に多額の金額を管理してもらうため、被後見人に説明する際にトラブルになる可能性があります。

また、後見制度支援預金こうけんせいどしえんよきんを取り扱う金融機関が増えてきていますが、この制度はスタートしたばかりで、すべての金融機関が取り扱っているわけではなく、地域によって利用できなかったり、近くの金融機関が取り扱っていないなど利用しづらい場合もあるかと思われます。

今後取扱い可能な金融機関は増えていくと思いますので、このデメリットは縮小していくと思いますが、現時点では各家庭裁判所ごとで運用方法が異なり、一部の金融機関のみの取り扱いを認めている場合もありますのでどの金融機関が利用できるのかなど管轄かんかつの家庭裁判所に確認する必要があります。

後見制度支援預金こうけんせいどしえんよきんの利用りように際さいし、その他注意点たちゅういてん

後見制度支援預金こうけんせいどしえんよきんを利用するにあたり、概おおむね普通預金金利型ふつうよきんきんりがたか無利息型むりそくがたの選択ができます。預金保険制度よきんほけんせいどの利用による全額保護ぜんがくほごの対象にするかしないか、開設時における金融機関の選定や利便性等注意が必要な部分もあります。

また「後見制度支援信託こうけんせいどしえんしんたく」にも言えますが、ご本人が準備されている遺言ゆいごんの内容が実現されなくなる可能性もありますので利用については慎重しんちょうにすすめることも必要です。

まとめ

親族後見人しんぞくこうけんにんが使いやすい金融機関が後見制度支援預金こうけんせいどしえんよきんを取り扱っていて、管轄かんかつの家庭裁判所でも利用でぎるのであればこれから長い期間、後見人として管理していくのであれば費用や使いやすさの点で見ると後見制度支援信託こうけんせいどしえんしんたくよりも後見制度支援預金こうけんせいどしえんよきんの方が、親族後見人にとって利用しやすいのではないでしょうか。
また、預金保険制度よきんほけんせいどを利用するかしないかについては、後見制度こうけんせいどが被後見人の財産を増やすのが目的ではなく、被後見人のために財産を保護することが主目的であるので、万が一金融機関がなくなってしまっても預金が全額保護ぜんがくほごされる無利息型むりそくがたがいいと思います。

成年後見

Posted by 栗原誠