テレビ電話方式による定款認証制度とは?
平成31年3月29日(金)よりテレビ電話方式による電子定款認証制度が始まりました。
例えば、九州在住の発起人が東京にある公証役場で定款の電子認証を受ける場合には、テレビ電話方式を利用すれば東京に行かずに手続きが完結できるので大いにメリットがあります。
新制度スタート前は、電子認証を受ける場合には、作成者本人又はその代理人が公証役場に出向き、公証人の面前で、本人確認をするなどの手続が必要でした。
しかし、平成31年3月29日から、一定の要件を満たす場合には、公証役場に行かなくても、テレビ電話で公証人の本人確認等を得ることにより、認証を受けることが可能になりました。
この制度が創設されたのは、平成30年6月15日に政府が閣議決定した「未来投資戦略2018」の中で2020年度中に、「定款認証及び設立登記のオンライン同時申請を対象に、24時間以内に設立登記が完了する取り組みを全国実施する」という内容が盛り込まれており、今回はその取り組みの一部となります。
テレビ電話方式による認証の条件
従来の方式は、今まで通り利用できますが、以下の①~②のいずれかの要件を満たす場合には、テレビ電話方式による電子定款認証が利用できます。
① 発起人等が定款に電子署名し、自らがオンラインで認証申請する場合(この場合は発起人等が認証の嘱託人となります)
② 発起人等が代理人に定款作成を委任し、定款作成代理人が定款に電子署名してオンラインで認証申請する場合(この場合は定款作成代理人が認証の嘱託人となります)
上記②の方法による場合、発起人等が代理人に定款作成を委任する方式は、PDFなどの電磁的記録である委任状に電子署名する方式でも可能ですし、紙の委任状に印鑑登録証明書の印を押捺する方式でも可能です。
発起人等が定款作成代理人に紙の委任状で定款作成を委任している場合は、電子証明書を使用して電子署名しなくてもよくなりました。
紙の委任状の場合は、委任状と印鑑登録証明書を公証役場に郵送します。(返信用レターパック等の同封が必要です)
令和2年5月11日より紙の委任状と印鑑証明書を公証役場に送付する方法も認められるようになったことによりさらに利用しやすくなりました。
認証の嘱託人については、電子証明書を用いて電子署名したり署名に必要なカードリーダーなどがないとこのテレビ電話方式は利用出来ません。
個人のマイナンバーカードや会社の電子証明書などを持っていない方が多くいらっしゃいますし、電子署名したり、オンライン申請をしなければならないので、この要件が意外と敷居が高く、テレビ電話方式による新制度の利用者はまだごく一部の方が対象といえるかもしれません。
公証人とテレビ電話をするための事前準備
パソコンの場合はGoogle Chromeブラウザを、スマートフォンの場合は「FaceHub」アプリを事前にインストールする必要があります。
公証人による、意思確認・本人確認方法
公証人によるテレビ電話方式による本人確認をスマートフォンで行うの場合は、「FaceHub」アプリを必ず通して行われ、「LINE」や「Skype」など他のアプリは使用できせんのでご注意ください。
事前の打ち合わせ時に、公証人からテレビ電話に接続するアドレスを送ってもらっておきます。指定の日時になったときに、送られたアドレスからテレビ電話を繋ぎ公証人と対話します。
テレビ電話の通話時に、嘱託内容の確認と公証人が、作成者本人又はその代理人(嘱託人)の人違いでないことを確認するため、顔写真付きの公的機関発行の身分証明書(運転免許証やマイナンバーカード等)を画面に提示して、身分証明書の画像を保存してもらいます。
テレビ電話で公証人と対話できるのは、制度上、嘱託人に限られ嘱託人以外の人(例えば、会社の従業員や士業の事務員など)が対話することは出来ません。
※ 「嘱託人」とは、オンライン申請により申請データのを送信した人のことを言います。
認証済みの定款データの受領
従来による方式では、認証後のデータをCD-R等に保存し窓口で交付されますが、テレビ電話方式は、公証人が登記供託オンライン申請システムのサーバーに認証済みデータを送り、嘱託人は、登記供託オンライン申請システムのサーバーからダウンロードして受け取ります。
手数料の支払い方法
電子定款認証にかかる手数料の支払い方法として、ネットバンクを利用して支払う方法が増えますが、嘱託人が手数料を振り込んだことを確認した後に認証することが多いと思われますので、支払い方法や時期については、公証人と打ち合わせが必要です。領収書は、公証役場から郵送されます。
同一の情報の提供の書面の交付を希望する場合
テレビ電話方式の場合、同一の情報の提供の書面(いわゆる定款謄本)を希望するときは、郵送での交付請求はできず、同一の情報の提供の書面は公証役場で交付することになっています。(テレビ電話方式は、データによりすべての手続きが完了することを前提としており、窓口での紙による交付を想定していないためです。)
申告受理及び認証証明書の交付を希望する場合
申告受理及び認証証明書については、公証役場の窓口で受領する方法もありますが、公証役場に行かず郵送交付を希望するときは、公証役場と事前に相談すれば郵送料実費を負担することにより郵送してもらえます。